脱力。


読み終わったときの正直な気持ち。


すごい感動するとか、泣けるとかではないのだけれど、


読み終わった後にずっしりと重たいものが胸に残るような感じ。




東野圭吾の本は初めて読んだのですが、


どんどん惹きこまれて、止まらなくなって、


一気に読んでしまいました。




19年前の大阪の質屋殺しがプロローグ。


迷宮入りしたこの事件に関係した亮司と雪穂の19年を描く。


事件当時は小学生だった二人が、


やがて成長し、社会で活躍する様を時系列で追うのだが、


その生き様には絶えず犯罪の匂いが見え隠れする。


とにかく物語のスケールが大きい!


最初はバラバラだったパズルの一片が


読み進めていくうちに組み合わさって全貌が見えていき、


そして、ところどころ虫食いのように残ってしまった謎が


コトンコトンとはまっていく。


1万ピースのパズルをやっと完成させたような、


そんな読み応えのある物語でした。




この物語の特徴は、


亮司が何を考え、雪穂が何を想ったか。


その心の奥に揺らめいていたものが何だったのか、


作品の中では一切語られていないということ。


だけど、主人公の冷淡で残酷な行動からは、


人間らしく活き活きとした感情は全く感じられない。


深く澱んだ闇に浮かぶ鋭い光と、


明るい煌きの内に秘めた暗い翳。


深い傷を負いながら、


どうしても守るべきものを庇う者だけが


放つオーラなのかもしれません。




ところで、「白夜」のことをフィンランドでは


「yoton yo(夜のない夜)」と言うそうです。


本当は夜なのに、見かけは昼のようにいつも明るい。


それはまるで雪穂の姿を表しているような表現だと思いました。


そんな夜の心を持っていながら、


本当の昼をもたらしてくれる光と愛を誰よりも一番欲していたのは


他ならぬ雪穂だったのかもしれません。




白夜行のドラマを見てしまうと、


活字で読んだときの印象が壊れてしまいそうな気がして、


読み終わるまではドラマは見るの止めようと思ってたんだけど、


もうソレ解禁~!



あと、白夜行の続編「幻夜」も出ているみたいなので、


近いうちにこちらも読んでみようと思います。