唯川恵、わりと好きで時々読みます。


女性の揺れ動く心の機微を描くのが


とても上手いと思う。


というわけで、今日は「恋せども、愛せども」のお話。


祖母、母、雪緒と理々子という4人の女性を中心に


繰り広げられる恋愛小説。


恋愛って、人生の永遠のテーマであり、


幾つになっても人は誰かを求め、惹かれ合い、


恋をすることが出来るんだぁ、って思えた


ぽかぽかと心温まる物語でした。




人間って不思議ですよね。


人を好きになる。すごーく好きになる。


世の中にはそれですんなり幸せになれちゃう人もいるかもだけど、


大抵の人は切なくて、寂しくて、苦しい経験をしたことがあると思う。


本気になればなるほど、自分のありったけの想いを込めてぶつかり合うし、


もしかしたら騙されたり、手ひどい仕打ちを受けて、


ボロボロに傷ついたりすることもあるかもしれない。




それなのに。




また人は誰かに恋しちゃうんですね。




特におばあちゃんの台詞で、心にずしんときた言葉があった。


おばあちゃんもある年配の男性と恋に落ち、結婚が決まるんだけど、


結婚直前にそのお相手の澤木さんが脳溢血で倒れてしまう。


幸いなことに命は助かったが、身体に障害が残ることは免れない。


楽しみにしていた温泉も旅行も行けず、


介護に明け暮れるであろう生活を慮って、


家族も、澤木さんの家族も、そして澤木さん自身も、


みんな結婚は白紙に戻したほうがよいと言う。



そんなときにおばあちゃんが家族に向けて言った言葉。


(以下本文より抜粋。おばあちゃんは金沢弁。)



「私たち、正式な結婚はまだやけど、


私はね、澤木さんと結婚の約束をした時から夫婦になったと思っとるが。


夫婦なら、助け合って生きてゆくのは当たり前や。


私は澤木さんに何かしてもらおうと思って結婚する気になったがやない。


私が澤木さんに何かしてあげたいから決心したが。


澤木さんが助かって、私はどれだけ神さまに感謝したかわからんわ。


澤木さんがいてくれるから、私も生きてゆける。


澤木さんのためじゃない、犠牲になるなんて考えてもいない。


私のために、澤木さんのそばにいたいがや。



ただ、それだけなんや」



こんなふうに迷いのない、潔くまっすぐな気持ちを


今どれだけの人たちが心に携えているのだろう。


自分は、そんな想いをしばらく忘れていると感じた。


傷ついたり、大事な人を失うのがやっぱり怖いと思ってしまう。


懲りずに恋もするし、好きで好きで仕方なくって


切なくなったりもするけど、


100%のうち30%は自分のためにとっておく。


私はそんな生き方をしている。



いつか100%で向き合えるようになるのかな。


なんだかそんなことをしんみり感じた一冊でした。


さらっと読めてしまうので、唯川恵が好きな方は是非。